紫外線と肌

 太陽光線は地球上の生物にとって、なくてはならない存在ですが、その中の紫外線(ウルトラバイオレット、略してUV)による弊害について考えてみたいと思います。

 人間は紫外線によって体内で生成することができないビタミンD3を作っています。ビタミンD3は骨を生成する上で重要なビタミンです。しかしその紫外線によって、日焼けをおこします。「サンタン」と「サンバーン」現象を、「日焼け」と呼びますが、日焼けは紫外線があたることによってメラニン色素が生成され、紫外線から身を守ろうとする防衛反応です。

 メラニンの生成過程は、まず表皮基底層にメラノサイトという細胞があり、その中のメラノソームという器官中でチロジナーゼという酵素の働きにより、出発物質チロジンがドーパ→ドーパキノンと変化し、後は勝手にドーパクロム→インドールキノン→メラニンとなっていきます。生成されたメラノサイト中のメラニンは、角化していく表皮細胞に取り込まれ、やがて垢になってはがれ落ちていきます。メラニンが過剰生成され、表皮細胞に取り込まれずに蓄積されてしまったものがシミ・ソバカスになるわけです。

 日焼けの短期的害は軽いやけど(ほてりや火ぶくれ)で、長期的害は乾燥肌になることです。皮膚は乾燥すると厚くなりやすく、厚くて乾燥した皮膚はシワが出来やすくなります。またシミ・ソバカスなど、美容的見地からはとてもマイナスにもなっているわけです。もし紫外線のマイナス要因を減らすことが出来れば、<老化>を先延ばしすることが出来るかもしれません。


紫外線とは?

 地表に届く紫外線量が一番多いのは4月、一番少ないのは11月です。日差し自体は太陽が最も高い位置にある6月が一番強いのですが、日本には梅雨があるので、日照時間のかねあいで4月になるわけです。もちろん5〜8月は要注意です。

太陽から地球にふりそそぐ光は、それぞれの波長によって下のように分類されます。
  種類 波長 割合
太陽光線 赤外線 780nm以上 42%
可視光線 400〜780nm 52%
A紫外線 320〜400nm 6%
B紫外線 280〜320nm
C紫外線 190〜280nm
(nm:ナノメーター=100万分の1mm)

 光のエネルギーは波長が短いほど強くなるので、C紫外線が一番エネルギーが強く、最も生理作用が強く、殺菌力も強くなるわけです。しかし、エネルギーの強い光ほどいろいろな物質に吸収されてしまい、到達力が弱くなります。

 幸いなことに地球ととりまく大気の上層にはオゾン層があり、有害なC紫外線が吸収・遮蔽されるため地表に到達することはほとんどありません。地上25km前後の成層圏では、大気中の酸素(O2)が紫外線を受けてオゾン(O3)に変化します。このオゾンが生成する層をオゾン層といい、これがフィルターの役割をしているわけです。

 近年、フロンによる大気上層のオゾン層破壊が地球規模の環境汚染として問題になっています。フロンガスでのオゾン層破壊によるオゾンホールの拡大を防ぐため、代替フロンが使用されるようになったのは記憶に新しいところだと思います。

 フロンとは、フッ素・塩素・炭素の化合物で、無色・無臭・無毒の液体です。安全性が高く、化学的にも安定していて、電気絶縁性も高いので、基板の洗浄・冷媒・噴射剤など広く利用されてきました。しかし、実際にはフロンが紫外線を浴びることで分解し、その生成物がオゾンを分解してしまうことが解りました。(フロンから出る塩素原子1個でオゾン分子が1万個破壊されると言われています。)

 フロンは10年以上かけてオゾン層に到達し、、しかも大気中に100年以上漂い続けるそうです。従って、しばらくの間オゾンホールは拡大し続けることが予想されます。よって、皮膚ガンや遺伝子欠陥を起こすことが心配されるB/C紫外線の地表到達量が増える可能性があることを踏まえて、「紫外線対策」を考える必要があると思います。


予防

 まず、一般的予防にはUVケア化粧品を使うことです。皮膚への紫外線の侵入を防ぐサンスクリーン剤には2種類あって、一つは紫外線を散乱(反射)させるもの、もう一つは紫外線を吸収してしまうものです。

 紫外線を散乱させるものとしては、二酸化チタン・酸化亜鉛・タルク・カオリンなどで、その粒子で紫外線を跳ね返すわけです。

 吸収するものでは、主にB紫外線を吸収するのが、ウロカニン酸(汗にも含まれます)・パラアミノ安息香酸・パラジメチルアミノ安息香酸オクチルなど。A紫外線を吸収できるものはほとんど無くて、パラソール系化合物が有力のようです。紫外線全体を程良く吸収するものとしては、2(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾドリアゾール・2-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾフェノンあたりがあります。

 波長の短いC紫外線は地表にほとんど届くことが無いとすると、問題はB紫外線とA紫外線からどれだけ身を守れるか?になります。現在出回っている紫外線吸収剤のほとんどが上記のように主にB紫外線を吸収する薬剤であり、波長の長い紫外線を吸収できる物があまり無い状態です。ここで重要になるのは、「意外に波長の長いA紫外線が悪い」ことです。波長が長いからこそ皮膚の中まで届いてしまうからで、結果的の肌の奥でメラニンが生成されてシミになっていくことになります。


 つまるところ、予防において大切なことは

  • まず直射日光に出来るだけ当たらない。
  • 帽子や日傘を利用する。
  • 紫外線吸収剤と散乱剤を複合して使用する。

といったあたりになると思います。

 日本化粧品工業連語会が統一した「日焼け止め指数(SPF)」は、サンスクリーン剤を塗ると、塗らないときに比べて日焼けを何倍の時間抑えるかを数値化したものです。値が大きいほど今夏が高く、通常生活で2〜5、海水浴やゴルフで11〜12、春スキーでは20〜30程度のものを使うのが一般的です。


対策

 前項でおおむね予防策が解ってきました。しかし、ここからが問題です。紫外線吸収剤は油溶性なのです。ということは日焼けしないように塗っているはずのサンスクリーン剤によって「油焼け」を起こす可能性があるのです。なおかつそれが皮脂腺より吸収される可能性も否定できません。(皮膚のバリアゾーンにより大抵の物質は皮膚内部に入り込むことはありません。しかし、脂質は皮脂腺内に入り込み、毛細血管から体内に吸収されてしまう可能性があります。)

 紫外線吸収剤自体は安全性が高かったにしても、油中に存在する状態で空気(酸素)に触れ、なおかつ紫外線を吸収するので、化学的に活性になり毒性を生じることも十分考えられます。

 かといって、女性がノーメイクで直射日光に当たるのは絶対に良くないと思いますので、使い方を工夫すると良いと思います。

  • 直射日光や反射光のある場所では、ベースに紫外線吸収剤主体のものを使い、仕上げに散乱剤中心のものを使う。
  • 直射日光が入ってこないところや透過光だけの所では、ベースは通常のもので仕上げに散乱剤の入ったものを使う。
  • 紫外線吸収剤が入ったものは長時間使用しない。

 しょっちゅう化粧直しをするようになります。塗り直すたびに洗顔するのが理想なのですが・・・・。面倒ですね! しかし、皮膚のためならばそうも言っていられません。かといってどこまでもがんばり通せる人はほとんどいないと思いますので、この下はアフターケアのお話です。


治療

 出来てしまったシミをどうするか?またシミになりそうに日焼けしたときのアフターフォローは?を考えてみましょう。直射日光に当たってすぐさま黒くなる人はいないわけで、時間をかけてメラニンが生成されます。よってメラニンの過剰生成を抑える働きのある薬剤を使用すれば、シミになって残ることが少なくなるはずです。

 新しいところでは、「アルブチン」があります。ヒドロキノン系物質で、コケモモやナシなどの植物中にも存在し、作用はチロジナーゼの働きを阻害してメラニンの合成を抑える働きがあります。

 次は「コウジ酸」です。コウジ菌が作る物質でやはりチロジナーゼの働きを止める作用があります。しかもドーパクロム以降の変化も抑える働きもあるようです。しかし、コウジ酸のこの作用が金属イオンを取り除いてしまうために起こるものだとしたら、副作用の点で注意が必要になります。酵素の働き自体が金属イオンを必要とするものが多いからです。(特に鉄・銅・セレンは皮膚や髪・爪などの生成に重要です)

 「メルカプトプロピオニルグリシン」という物質も、メラニンの合成を抑制しますが、やはり金属を取り去る作用があるので注意が必要です。

 よく使用されるものに「ビタミンC(アスコルビン酸)」がありますが、これもドーパからドーパキノンへの変化を抑制することでメラニンの生成を抑えます。また漂白作用もあるので、出来てしまったシミにも効果があるようです。このとき、強く作用させると、黄色人種では白斑を生じることもあるので注意が必要です。

 アルブチンのところで出た「ヒドロキノン」という薬剤もあります。ヒドロキノンモノベンジルエーテルが弱くなったもので、脱色作用があります。しかし、白斑が生じる場合があるので注意が必要です。

 最後は「レーザー」を使った治療です。色素の詰まった細胞は他の細胞よりも光を吸収しやすいので、レーザー光線で分解してしまうものです。現在では、安全性や安定性などの問題で気軽にできるものではありませんが、近い将来もっと現実的なものになると思います。

 結論。まずはよけいに日に焼けないこと。個人的意見としては、紫外線吸収剤のようなものはできるだけ使わないようにして、できるだけ紫外線を散乱させ、多少焼けてしまった肌も「代謝」によってもとの肌に戻ってくれるような状態が理想だと思いますが、年々そうは行かなくなってくるのが現実だと思います。症状がでてしまったら、症状や程度で自分にあったものを探してみてください。立場上「これ」とはいえないのですが、作用の比較的穏やかなコウジ酸やアルブチンなどはなかなかいいと思います。

2001/6/5


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