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酸性とアルカリ性 |
pH<ペーハー(独)またはピーエイチ(英)>とは何でしょう?テレビや雑誌などでよく「弱酸性」という単語が登場します。水などでもアルカリ水・酸性水などはよく聞くと思います。一般の方は、皮膚や髪には弱酸性がよくて、口から体内に入れるものは弱アルカリ性がいいと思っている方が多いようです。本当にそうなのでしょうか?もう一度pHとは何かを考えてみたいと思います。
定義<pH=水溶液中の水素濃度イオン指数>簡単に言うと、酸性の度合い・アルカリ性(塩基性とも言います)の度合いを数値化したものです。ただし、pHの数値のみでは酸(またはアルカリ)の直接的な強さを表せるものではありません。塩酸や水酸化ナトリウムのように溶液中で100%解離するものもあれば、1/100や1/1000しか解離しない物質もあります。これらの電離度の低いものは弱酸・弱塩基と呼ばれ、濃度が薄くなればなるほど電離度が上がる性質があるので、希釈してもpHはあまり変わりません。よってpHの数値のみで危険度を判断することはできないのです。たとえば、胃液(塩酸)のpH2と食酢のpH3では数値的には大して変わらなくても「酸」としての強さは全く違ってきます。このあたりが非常に理解しにくい所だと思います。
pHとは「HydrogenPowerハイドロゲンパワー」の略で、ハイドロゲンは水素を、パワーはこの場合累乗(べき)と訳します。純粋な水[H2O]は1000万分の1個だけ水素イオン[H+]と、水酸イオン[OH-]に解離します。式にすると[H+]=[OH-]=1x10-7M(Mはモル)で、べき数が7で平衡になるので中性は7と定義されています。 [H+]>[OH-]の時は酸性になり、[H+]<[OH-]の時はアルカリ性になります。前述のようにpH値はべき数での対数値なので、pHの数値が1変化するとイオン濃度は10倍変化することになります。
pHとはあくまでも水素イオン濃度指数(または水酸イオン濃度指数)の事であり、これ以外の元素が解離していてもpHには全く影響がないわけです。たとえば、塩酸[HCl]は、[H+]と[Cl-]に解離して水素イオン濃度が高くなるので酸性。水酸化ナトリウム[NaOH]は、[Na+]と[OH-]に解離して水酸イオン濃度が高くなるのでアルカリ性を示します。また、食塩[NaCl]を水に溶かすと、[Na+]と[Cl-]に解離するので、この場合水素イオン・水酸イオン濃度ともに変化がないので、溶液のpHは変化しません。
また、ちまたのHPを見ていると「酸性/アルカリ性」と「酸度/アルカリ度」と「酸化/還元」の区別が付いていない説明が非常に多い(特に酸性と酸化の区別)ので、鵜呑みにしてしまうととんでもない誤解をしてしまいます。「酸度とアルカリ度」と「酸化と還元」については、、近々パーマの項で説明したいと思います。
ここまで、とてもわかりにくいかと思いますが、何となく理解してもらえればいいかと思います。
最近、弱酸性の洗顔剤・シャンプー・ボディーソープが流行です。何故でしょうか?メーカーの答えは「髪や皮膚が弱酸性だから、弱酸性の製品のほうが刺激が少ない」だそうです。確かにそういう面もあると思いますが、すべて弱酸性の方がいいのでしょうか?
まず、皮膚や髪はだいたいpH4.5〜6.5程度の弱酸性です。この状態が一番バランスが取れていて、よく「等電点」などと呼ばれます。なぜ弱酸性になるかというと、<アミノ酸とは?>の項でも触れてますが、皮膚・髪を構成するアミノ酸の中で、酸性に解離するアミノ酸のほうがアルカリ性に解離するアミノ酸よりも多いからです。
次に、そのままの状態では<皮膚・髪そのものはpH値を示すことはない>ことです。上記と矛盾するような感じがしますが、pHの定義は「水溶液中の・・・」というのがあって、完全に乾燥しているときはpHは無いのです。水分があれば電離して弱酸性を示すので、間違いではないのですが、実際にはpHメーターを皮膚や髪に押しつけても値は変わりません。しかし、皮膚に限っては<皮脂膜>というものがあります。これがきちっと弱酸性を示すのです。
皮脂膜は、0.5ミクロンで文字通り皮膚の膜として存在します。これは皮脂腺から分泌される脂質(右表参照)と、汗腺から分泌される汗が混じったものです。酸性脂肪と酸性の汗のためにやはりpHが4.5〜6.5になっています。皮脂膜が弱酸性になっているおかげで、角質層が構造的に安定し、乾燥を防ぎ、細菌の繁殖を抑え、異物の侵入を防いでいるわけです。また<ビタミンとは?>の項にもありますが、体表で紫外線の作用で皮脂成分の一部がビタミンDに変化し、それが再び体内に吸収される働きもあります。
通常、石けん(約pH9)で洗顔すると一時的にpH8程度になりますが、正常な肌なら30分以内にもとのpHに戻ってしまいます。これを「皮膚のアルカリ中和能」といい、この機能がきちんと働いていれば多少のアルカリ性化粧品は全く問題にならないのです。逆に言えば、通常のアルカリ性の石けんを使うことで、汚れやアカ(老化角質)を落としやすくしたり、アルカリ性の乳液などで角質層を軟化させ、有効成分を浸透させたりするには都合が良かったりします。
これが何らかの理由で表皮が弱酸性を保てなくなると、皮膚が過敏になり、細菌炎症やアルカリ炎症を起こしやすくなり、また日焼けもしやすくなります。通常汗は、尿酸・乳酸・アミノ酸等酸性物質が多いのですが、必要以上に汗をかくと、汗自体がアルカリ性になってしまいます。すると、細菌が繁殖してたちまち「あせも」ができてしまうのです。
つまり、常に皮脂膜が弱酸性に保てる正常な皮膚は石けんでもよいのですが、アルカリ中和能が低い皮脂膜形成力の弱い方・乾燥肌の方・刺激に弱い肌(敏感肌)の方・アトピーの方・炎症を起こしている部位などでは、アルカリ性物質を使ったときには人為的にpHを弱酸性に戻してあげる必要があるわけです。この場合は最終的に使う化粧品類(薬品類)で弱酸性にしてあげればいいかと思いますが、洗浄剤そのものを弱酸性のもの(ボディソープなど)を使う方がより手軽でしょう。
| 表皮脂質 | 分析値 | 平均 |
| トリグリセリド(中性脂肪) | 19.5〜49.4 | 41.4% |
| ジグリセリド(中性脂肪) | 2.3〜4.3 | 2.2% |
| 脂肪酸 | 7.9〜3.9 | 16.0% |
| スクワレン | 10.1〜13.9 | 12.0% |
| ロウ類 | 22.6〜29.5 | 25.0% |
| コレステロール | 1.2〜2.3 | 1.4% |
| コレステロールエステル | 1.5〜2.6 | 2.1% |
髪は皮膚と違って代謝がありません。傷んだ髪を「死んでいる髪」と表現する方がいますが、、健康毛であっても代謝がないので「死んだ細胞」ということがいえます。皮膚に置き換えると「剥がれ落ちたアカ」と同じということもいえます。よって、アルカリ中和能などあるはずもなく、アルカリ性化粧品をつけたらそのままになってしまいます。つまり、髪は皮膚以上にいたわらなくてはならないのです。
通常、体は石けんで洗っても髪を石けんで洗うことはあまりないと思います。<界面活性剤>の項にも述べましたが、石けんを水道水で使用した場合、不溶性の石けんカス(脂肪酸塩類)ができて、これが非常に感触を悪くするのです。皮膚でしたら「アカが落ちた」という感触で済みますが、毛髪は金属成分と結合しやすい特性を持っているので、髪をとかすのさえ困難になってしまします。
そういった理由から、ボディソープなどに比べるとかなり早い時期からシャンプーはありました。最近は、生分解性も高く、急性毒性が低いシャンプーが普及していて、もちろん大部分の製品は弱酸性です。よって、特別キシミがでたり絡まったりしなければ、無理してリンスやトリートメントをする必要はありません(というよりも、できればあまりカチオン活性剤は使わない方がよい)。もっとも、パーマやカラーをされている方やロングヘアの方などは必要だと思いますが・・・。
髪は重金属や毒素の排泄器官としては重要な役割がありますが、皮膚から外にでてしまったら頭部のクッションとしての役割以外はありません。健康上は髪は無くてもいっこうに構わないものなのですが、やはり美容的な問題として「見栄え」があります。顔の額縁として、またオシャレの表現として重要な役割がありますので自力回復のできない髪こそ、もっともっといたわってあげる必要があるのではないでしょうか?
また家庭科の問題になります。「梅干し」は酸性食品でしょうか、またはアルカリ性食品でしょうか?またポカリスエットの初期のCMに「アルカリイオン飲料」という宣伝文句がありました。答えはどちらも酸性ですがアルカリ性食品です。
難しいのですが、<アルカリ食品とは、食品が体内の代謝経路にはいった後、排泄されずにのこる物質がアルカリ性である食品をいう。食品分析にあたっては、食品を燃焼させ、後にのこった灰がアルカリ性をしめすものをさす。>という定義からいくと前述の2つはアルカリ性食品になるのです。灰の中にカルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、鉄などが多くのこるとアルカリ性にかたむき、このような塩基の水溶液を中和するのに必要な酸の量でアルカリ性の度合いを測ります。つまりミネラル成分が多いものがアルカリ性食品になるわけです。
皮膚や髪と違って体の中は主に水分で満たされています。血液、リンパ液、細胞間液、体腔液などを総称して「体液」と呼びますが、体液は通常弱アルカリ性になっています。浸透圧、pH、グルコース濃度、イオンや物質の濃度や組成は常に一定にたもたれるようになっていて、およそpH7.38〜7.42という非常に狭い範囲に保たれています。そのために、飲料水はアルカリ水が良いといわれているのでしょう。
では、アルカリ性食品が良くて酸性食品は悪いものでしょうか?「酸性食品はからだを酸性にするから良くない」と言う人がいます。これは、大きな勘違いです。ちなみに体液が酸性になってしまったら、人間は生命維持活動ができません。体液が酸性になることは、腎機能が正常である限りあり得ないことなのです。食品は必ず<胃>を通ります。胃液はpH1〜2の強酸性の希塩酸です。市販されている機械(整水器)で水を電気分解して得られる酸性水やアルカリ水程度では、直接体液のpH操作することはできるはずもありません。人間のからだは多少の外的要因ではそうそう変えることは出来ないのです。ましてや理論上の産物である「パイウォーター」などはナンセンスこの上なしです。(※ついでに付け加えると、消化器官は体内にあっても外気と通じているので、皮膚などと同じで外側の器官であるとも言えます。)
酸性食品・アルカリ性食品と分けて考えるのではなく、食事においてさまざまな種類の食品を摂取し、偏食をなくしてバランスをとるため、と考えることができれば、健康維持に非常に役に立つ「分類方法」と言えると思います。このあたりは、時間があったら「代謝」の項目をつくって説明したいと思います。
小学校でやった実験で水酸化ナトリウムと塩酸と1:1で混合し蒸発皿で加熱し、水分を飛ばすと食塩(塩化ナトリウム)が出来たの(NaOH+HCl=NaCl+H2O)を覚えていると思います。塩酸も水酸化ナトリウムも単体では大変危険な劇薬ですが、中性になった状態(中和)では塩(えん)が生成され、全く違った物質になります。
化粧品の成分(医薬品・医薬部外品もそうですが)には、「硫酸」「塩酸」などといった怖い名称が付いたものが多数あります。しかし、上記のように生成塩は全く違った物質になってしまうことが多いのです。よって、単純に「硫酸だから怖い」とか「塩酸だからダメ」という短絡的考えは払拭してください。事実、最近のCMなどでは有効成分として、「塩酸ブロムヘキシン」「塩化リゾチウム」「乾燥硫酸ナトリウム」「デヒドロ酢酸ナトリウム」などたくさんの成分を見つけることができると思います。
ここまでで、「弱酸性だから良い」とか「アルカリ性だから悪い」、「酸性食品が体悪い」とか「アルカリ性食品が体に良い」などと言う考え自体がナンセンスであることにお気づきいただけたでしょうか?最終的に<ヒトの体において、どういう状態であれば良いか!>になってくるのではないでしょうか。
結論としては、宣伝や販売のための情報は額面通りに取らないで、客観的に本当に良いか・悪いかを判断できるだけの知識を身につけて、自分の体質や生活習慣に合って、なおかつ自分なりに良いと思えるものを使う事が大切だと思います。化粧品に限らず、薬品類・台所用品・洗剤類・入浴剤・殺虫剤など身近なものをもっとよく観察してみましょう!きっと新たな発見があるでしょう!
2001/6/5
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