界面活性剤とは

 界面活性剤とは油と水の仲立ちをするものです。その性質から主に洗浄剤として知られている訳ですが、その他、乳化作用、浸透作用、湿潤作用、殺菌作用などもあり、化粧品・食品・薬品などに広く利用され、日常生活に欠かせないものになっています。
水と油だけでなく、空気と水など簡単にまじりあわない物質どうしを混合させたり、コンクリートの分散剤などのほか、磁気テープやフロッピーディスクの製造などでも、微粒子の磁性体を塗料の中で均一に分散させるためにも使われていたりと、工業分野にも利用されています。

1,種類
アニオン界面活性剤
−に電離する。皮膚・髪から汚れを引き離す
せっけん、シャンプー、洗剤など
カチオン界面活性剤
+に電離する。皮膚・髪に吸着しやすい
トリートメント、リンスなど
ノニオン界面活性剤
電離しない
シャンプー補助剤、クリームなど
両面界面活性剤
+と−に電離する
ベビーシャンプーなど
2,安全性
急性毒性の強さ:
カチオン>アニオン>ノニオン
(両面界面活性剤は、非常に低刺激のものから、かなり刺激の強いものまである)
急性毒性(経口・経皮)、亜急性毒性、慢性毒性 
LD50:50%致死量mg/体重1kg当り(mediamLethalDose)
※一般に実験用ラットにおいて半数が死亡する体重あたりの致死量のこと
毒性の強さ LD50値(mg/kg)
無毒 15,000以上
事実上無毒 5,000〜15,000
軽度の毒性 500〜5,000
中軽度の毒性 50〜500
強毒性 1〜50
超毒性 1以下
代表的な界面活性剤の急性毒性値(LD50mg/kg)
種類 活性剤 LD50値(mg/kg)
アニオン 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム 2,500
ラウリル硫酸ナトリウム 2,700
POE3ラウリル硫酸ナトリウム 1,820
P.P.T活性剤 20,000〜
ノニオン POE4ラウリルエーテル 8,600
ショ糖脂肪酸エステル 20,000〜
POE20ソルビタンモノステアレート 38,000
カチオン 塩化ラウリルジメチルペンジルアンモニウム 450
塩化ラウリルトリメチルアンモニウム 50〜300
参考 アルコール 2,000〜6,000
食塩 3,000
重曹 4,220


3,洗浄剤としての界面活性剤の種類(右欄参照)
せっけん系界面活性剤
脂肪酸ナトリウム
脂肪酸カリウム など
石油系界面活性剤
分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム
アルキルエーテルスルホン酸塩類 など
高級アルコール系界面活性剤
ラウリル硫酸塩類
ポリオキシエチレンラウリル硫酸塩類 など
アミノ酸系界面活性剤
ラウロイルサルコシンナトリウム
アシルメチルタウリン(AMT)
アシルグルタミン酸
メチルアラニンナトリウム
PPT活性剤 など
石けん系
 石けんでウールを洗いますか?ウールは羊の毛です。髪とウールは構造も組成もそっくりなのですが、ウールはソフトな合成洗剤を利用しているのに、自分の髪は石けんで洗うのはいかがなものでしょうか?試しにウールを石けんで洗い続けてみてください。黄ばんで、生地も薄くなり破れやすくなります。
 なので、髪を洗うには向きませんが、からだや顔を洗う分にはコストと性能のバランスが非常に良いと思います。
 しかし、残留金属塩の問題やアルカリ性であることを考えると、アトピーの方・敏感肌の方にはあまり薦められません。
 ※自作する場合の注意点
 1, 水酸化ナトリウムの取扱いには十分注意。長めのゴム手袋とゴーグル着用。皮膚に触れないことと、絶対に目に入らないようにすること。室内で行う場合は十分換気すること。
 2, 脂肪酸分子と結合する水酸化ナトリウム分子の量が、ちょうどピッタリの数にならないと残留物が出る。もし水酸化ナトリウムの量が多くて遊離アルカリとして残ってしまった場合、使用時に皮膚が侵される。逆に脂肪酸が多い場合洗浄力が弱く、泡立ちも悪くなる。
 3, 完成してもすぐ使わないこと。遊離アルカリが自然酸化されるまで待つ。目安は、石けんを水道水にて使用時に、ヌルつきが取れにくい場合はまだダメ。
 水酸化ナトリウム:
強アルカリの劇薬。苛性ソーダとも言う。ソーダ(Sodium)はナトリウムのこと。苛性は金属や皮膚を腐食するという意味。
石油系
 現在では<ABS:アルキルベンゼンスルホン酸系>を利用したシャンプーは販売されていません。ABSは脱脂力が強く、皮膚刺激があり、ハードタイプ(生分解性が悪い)なので、使われなくなりました。
 同じ石油系でも<LAS:直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩>や<AES:アルキルエーテルスルホン酸系>はソフトタイプ(生分解性がよい)なので、台所洗剤や廉価版のシャンプーによく使われています。
 脱脂力や皮膚刺激を考えたとき、直接皮膚に触れるものとしてはできれば使いたくないものです。
洗濯用洗剤・家庭用洗剤などの主剤になっています。
高級アルコール系
 炭化水素の手の一つが水酸基(-OH)になったものがアルコールです。
 この場合の高級アルコールとは、品質の良いアルコールという意味ではありません。炭素数が多いこと(炭素数6以上)を「高級」と表現します。ろうや鯨油なども高級アルコールです。最近では、石油から合成されることが多くなりました。
 これを硫酸塩化すると、洗剤となります。石けんよりも硬水や低温下における性能がよく、コストも低いことから、幅広く利用されています。
 また、生分解性も高く、一部のアミノ酸系洗剤よりも皮膚刺激が少ない場合もありますが、脱脂力がやや強めなので皮膚につっぱり感が出やすく、高級アルコール系を主剤にしたシャンプー・ボディソープは、敏感肌の方にはあまりお奨めできません。
 台所洗剤やシャンプー・ボディソープの大部分の主剤になっています。
アミノ酸系
 一般にタンパク加水分解物を親水基にしたもので、生分解性・急性毒性・低刺激性の性能の高さでは一番ですが、コストが高いのが難点です。
 通常、アシルグルタミン酸が多く使われていますが、他のアミノ酸やアミノ酸を複合利用したP.P.T活性剤もあります。
 最近では、特に低刺激であるアラニンを利用した製品が出てきています。コストの問題からこれを主成分にしている製品はごく一部しかありません。
 助剤として他のアニオン活性剤を含む製品が多いので、「アミノ酸系」の表示があっても安心できませんので注意が必要です。成分表示の「水」の次に記載されているものが洗浄剤の「主剤」です。
(※「アミノ酸配合」とか「アミノ酸シャンプー」などと記載されているもの場合は注意が必要です。)

界面活性剤に関する個人的意見

 人の表皮・髪は濡れるとマイナスに電離します。磁石をイメージしてもらえると解りやすいと思いますが、アニオン界面活性剤ではマイナスとマイナスとなり、反発し合うので洗剤として汚れを落とすことに使われます。逆にカチオン界面活性剤は、マイナスとプラスになり引き合うので、リンス・トリートメントに使われます。一般家庭での身近な活性剤は、主に洗剤になると思います。

 よく、「合成洗剤は水を汚染するから、洗剤は残った油を利用して自分で作る」方がいるらしいですが、これは必ずしも正しいとは限りません。単純な石けんや粉石けんなどは、単体での生分解性は高いのですが、冷水に溶けにくく、水の硬度に影響されやすい欠点もあります。それほど硬度が高くない水道水でも、微量のカルシウム・マグネシウムといったミネラルと結合して「石けんカス(金属石けん)」を生じ、それが不溶性であるため残留性が高く、いろいろな弊害をもたらす場合があります。

 皆さん、お風呂に入って石けんでからだを洗ったとき、油分がしっかり取れて滑る感じが無くなったときに「汚れが落ちた」と感じると思います。実は、これは汚れが落ちたのではなくて、全身に石けんカスの皮膜が出来たせいなのです。湯船や洗い桶に出来る汚れも、垢ではなく石けんカスの固まりなのです。通常、キレート剤(金属封鎖剤)としてエデト酸塩類が配合されているのですが、それでもすべてを取り除くことは出来ません。

 昨今の合成洗剤は、無リンですし冷水にも良く溶け、なおかつ自然分解型になっているため、使用に際してあまり気を付ける部分が無くなってきています。かといって、石けんより合成洗剤が優れているということもいえません。同じ汚れを落とす場合、石けんは洗浄力が弱いため使用量が増えるし、石油系・高級アルコール系は洗浄力が強いので少量ですみます。結局同じ結果を求める場合は、大差はないのではないでしょうか?

 大雑把な分け方で判断するのではなく、個々の成分と性質・特性によって、また精製度によって変わってきてしまうので、自然のものがいいとか化学合成品が悪いとかの問題ではないと思います。結局、天然のものであれ、合成のものであれ純度が上がって不純物が限りなくゼロに近づけば、<製品>としての特性は同じものになってしまうはずです。

 たとえ、生分解性が高くても・低刺激であっても必要以上に多量に使うことは環境や皮膚への負担になるのは間違いないことです。要は、「環境汚染するほどの量を使わない」「からだに害がでるほどは使わない」ことが重要です。すべて言える事だとは思いますが、用法・用量は良く守ることが大切になると思います。洗剤や化粧品を製造・販売している方々には申し訳ないのですが、個人的に納得できる「製品」が非常に少ない現状を悲しく思ってます。「無添加」「天然成分」「自然派」「高純度」など魅力的な言葉はたくさんあります。<化学>が販売するための<化かし学>になっているような気がします。どこのメーカーも他をけなして自分をよく見せようとしているし、自分のところが「正義」という表現が多すぎないでしょうか?

 よく、「植物系は良い」「石油系は悪い」「天然のものは良い」「合成のものは悪い」と聞きます。そういった表面的な部分はこだわってしまうと、本当に必要な<性能>を得られることができなくなってしまいます。天然で毒性を持つものは「植物」が圧倒的に多いのを忘れていないでしょうか?植物は自力移動できないので、捕食されないように毒性を持つのです。よって、不純物(毒物も)が含まれる、精製度が低い植物原料でつくられた製品が一番危ないかも知れません。究極の選択(極端な例):植物と石油のどちらを食するか?トリカブトの根10gと原油10cc!どちらがといわれればこの場合は原油でしょう。

 私たちが日常生活において利用するものは、<安全性>と<利便性>のバランスが取れていて、なおかつ<安価>で<自分にあったもの>が見つける必要があるでしょう。そのためには、自分の髪・皮膚の特性を知り、原料の一つ一つを理解できれば「選択」するのはそれほど難しくはなくなると思います。我々消費者は、もっと知識を身につけて、本当に正しいかどうかを判断できる力に身につけなければ、自分の身を守ることが難しい時代になっているのかもしれません。


 ★ついでのおまけ★
「石けん派」と「合成洗剤派」の対立について一言!

 現在、おおむね下表のような評価がされています。しかし、これをこのまま鵜呑みにはできないでしょう。実験では同濃度の界面活性剤を使用するわけですが。実際、家庭などで使われる場合は、その洗浄力の差により、それぞれ使用する量が変わってくるはずです。現実的な使用絶対量を考慮しないと不公平になります。私のような素人が考える限り、この対立は「目くそが鼻くそを笑う」ようなものだと思っています。ちなみに洗濯洗剤で見れば、同じ汚れを落とす場合、石けんは合成洗剤の3倍以上の量を使わなければならないそうです。

 「石けん派」「合成洗剤派」に対比は、「東洋医薬」「西洋医薬」の対比に似ていると思います。薬品も同じ期間で同じ効果を求めるときは、同じ量の有効成分が必要なわけで、それに対する副反応(副作用)も同じものになってしまいます。「漢方薬」は有効成分の絶対量が少ないために、作用が緩和になり副反応が表面化しにくいので、長期間服薬が必要になります。これは胃腸の弱い方や、病気・病状によってはとても効果的なので、漢方だから安心だとか、抗生剤の方が良いとかの論争は無意味なことではないでしょうか。

  生分解性 有機汚濁 魚毒性 油脂消費 人体影響
石けん × ×
植物合成 ×
石油合成 ×

 以下、上表についての私見(アミノ酸系活性剤は「植物合成」に含み、高級アルコール系は「石油合成」に含む。)

生分解性: 水温が低く硬水下では石けんが不利。温度が高く軟水下では石けんの分解スピードは速いが、石けんカルシウムになってしまうとなかなか分解されなくなる。よって純粋な使用量で考えた場合は大差なし。住んでいる地域の水道水の硬度や人口密集度により使い分けができればよりベスト。
有機汚濁: 生分解性に通じるが、生分解とは自然に分解するという意味ではなく、微生物が分解するという意味。石けんはBOD(生物化学的酸素要求量)が高く、水中の酸素を大量に使うため環境負荷になる。酸素が使われてしまうと、魚も住めない。それどころか、酸素が少なくなると有機物の分解が嫌気的(酸素を使わない)に行われるようになり、硫化水素等の発生の可能性もある。
魚毒性: 水道水の中に魚を入れ、そこに石けんと合成洗剤とを同量入れた場合では、石けんは石けんカルシウムという固形物になり、界面活性剤としての能力が落ちるので魚には作用しにくくなる。合成洗剤は、水質がどんなものでも、そこそこの洗浄能力を確保するという特性上、常にある程度の界面活性効果を示す。その界面活性効果がエラ呼吸を妨げるので、メダカの水槽などに入れると短時間で窒息して死んでしまう。この場合あくまで窒息死であって界面活性剤自体の毒性によるものではないので「魚毒性」という言葉は不適切。これを逆手にとって儲けている石けん業者のなんと多いことか・・・。残念。実際の毒性としては、水道水でなく純水でテストする限り石けんの方が毒性が強いのは化学者であれば知っているはず。
油脂消費: 石けんは製造に大量の油を必要とする。また、脂肪酸を使用する石けんと植物系は、大量の森林伐採に通じ、環境破壊を免れることはできない。使用後の環境破壊よりも、原料としての環境破壊の方が地球規模で考えた場合の影響は大きいはず。現実として、世界有数の活性剤消費国の日本は、東南アジアにパームヤシの「専用畑」を持つ大企業があるほど。
人体影響: 直接飲んだり皮下注射したりするものではないので、からだに対する毒性はあまり問題ない。ただし、アトピー・敏感肌・乾燥肌の方は注意が必要。利用する「水」によっても変わるので自分にあったものを見つけることが大切。目や粘膜・傷のある部位に使用するときは石油系は避けたい。


個人的結論:

 どこのメーカーも、いかにも効果が出そうな魅力的な宣伝文句で売り込んできます。でもよ〜く成分を見てください。TVCMでよく宣伝されている製品の成分を見てみると、ほとんどのシャンプー・ボディーソープのアニオン主剤は高級アルコール系の「ラウレス硫酸系(従来名称:POEラウリル硫酸系)」です。それにカチオン化油脂やシリコーンを入れて無理矢理質感を良くしているだけです。これでは台所用洗剤と大差ありません。また主剤が石油系の「直鎖アルキルベンゼンスルホン酸系」で、洗濯用洗剤レベルの物もあります。もちろんこれらが、「製品」として悪いものという意味ではありません。

 自分にあった製品を選択するには、自分の皮膚・髪の質と特性を知り、必要な性能を持った成分が使われているのが大切です。老化角質を剥がし取るにはアルカリ性の石けんが有利ですし、脂性の方がアミノ酸系のモノを使ってもサッパリしないでしょう。また、敏感肌の方が石油系のモノを使うと大変だと思います。メーカーや製品名にとらわれることなく、いろいろ試してぜひ本当に「自分にあったモノ」を探し当ててください。

 管理人である私自身は「石けん派」でも「合成洗剤派」でもありません。それぞれに利点と欠点があるので、上手に使い分けています。我が家では私と次男がアトピーの気があるので結構気を使っていて、風呂には軟水器を付けています(石けんの欠点がかなり消失します)し、シャンプー・トリートメント・ボディシャンプー・石けんは家族それぞれにあったものを選んで使わせています。一つの指針として、合成洗剤を購入する際は、成分表を見て特定のカチオン活性剤の使用量ができるだけ少ないものを選んでいます。カチオンは吸着・残留生が強いので、皮膚に障害をもたらす確率が高くなるからです(髪にはプラスになる場合もありますが)。

 使用にあたって、「安全性に自信はありますが、使いすぎないようにしてください」と言ってくれるようなメーカーは信頼できるでしょう。化粧水をコットンに含ませて無駄遣いさせるような、<いかに大量に浪費させるか>を商売の鉄則にしているのが化粧品業界です。そんな中で「過ぎたるは及ばざるがごとし」と言えるメーカーはとても正直だと思います。

2001/6/5


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